朝霧において迷路-まよいみち- サンプル

SAMPLE

「ふっ……、」
 狭く温かいそこをかき回せば、ぐちゅりと指先から音が伝わってきた。同時に、快感を滲ませたソハヤの声が聞こえてくる。雨の反響する洞窟の中、先程から聞こえてくるのは縋り付くように己に抱きつくソハヤの声ばかりだ。
「んっ、んんっ……ぅあっ」
 ソハヤが上げる声は大典太の肩口に消えていく。洞窟の中は声が響くから嫌だと、大典太の肩にしがみついて我慢をしていた。どうせこの雨音では外には聞こえないのだから、もっと聞かせてほしいと思うが、それを言えば行為自体を中止されかねないので、本丸に戻ったら思う存分鳴かせようと決め、今は我慢をする。
 腹の中の熱を煽る声を聞きながら、大典太は足の上に座っているソハヤの後孔を二本の指で慣らす。潤滑油の類は当然のことながら持ってきていないため、怪我用の軟膏を中へと塗りつけていく。少しひやりとする外気に対して、ソハヤの中は酷く熱い。
 久しぶりだからか、それとも座位という格好だからか、ソハヤの中は少し狭く感じた。傷みを感じないようにとゆっくり丁寧に中を拓き、ぐるりと指を回す。ソハヤの腰が揺れて壁がひくつき、きゅうと指を締め付けて快感を拾っていることを伝えてくる。それに煽られて熱が上がっていく己を、未だだと諫めるようにして意識を指先へと集中する。
 塗り込めた軟膏が溶けて滑りが良くなった後孔の奥へ、指を更に進める。第二関節を埋めたあたりで指先を曲げ、指の平を押し付けて壁を擦り上げる。ひ、とソハヤの喉が鳴る。随分と前に覚えたソハヤの感じる場所をもみほぐすようにして指を動かしていると、背に回った腕の力が強くなった。
「……も、きょうだい、」
 早く、と吐息とともに耳に吹き込まれた言葉を、拓ききっていないからと拒否する。二本の指を広げてまだ硬さがあると示せば、くぅとソハヤの息が詰まる音がした。宥めるように背を撫でながら、軟膏を追加し三本目の指を潜り込ませると、中が歓迎するように蠢く。
 だいぶ緩んではいるが、己の陰茎を埋めるにはもう少し拓いておいたほうがいい。本丸でも宿でもなく、こんな何もない場所では、怪我をする危険性を少しでもなくしておきたい。
 三本の指でソハヤの後孔をぐぷぐぷとかき回す。塗りつけた軟膏のぬめりを借りて奥へと指を滑らせ拓いていき、弱いところを重点的に指で掻いては柔らかくしていく。
「くっ……あっ……、はっ、」
 快感を逃がそうとしてか、抱きつく腕の力が徐々に強くなり、背が丸くなっていく。その背を空いた手でなぞれば、びくりと身体が跳ねた。反応が返ってくるのが楽しくてぼこぼことした骨をなでていると、熱を孕んだ声で怒られた。
「きょうだいっ、あそ、ぶな……」
 時間がないのだから早く、と切羽詰まった声が耳元に囁かれる。危険性がないとは分かっていても、万が一ということもある。さらにここは外だ。いつ誰がきてもおかしくはない。
「ああ、そうだな」
 背を撫で下ろし尾てい骨を辿って、臀部の割れ目が始まる場所を指でくにくにと揉む。締め付けてくる内壁は先程よりも少し緩んでいるようで、彼方此方を撫でていた手で臀部を開き、埋め込んでいた三本の指で強く壁を引っかきながら、付け根まで突き入れる。中で大きく開けば、ひ、と小さく声は聞こえるが、内部に拒まれることはなかった。
「兄弟……」
 快感に力が抜けたソハヤの身体を起こし、己の服を脱いで岩へと敷き、その上から岩にしがみつかせる。洞窟の入口から見れば顔だけが見えるような位置だ。座位のままでも良かったが、この方が双方楽なはずだ。
 腰を掴んであげさせたその格好に、大典太の腰がずくりと疼いた。上半身裸になっても外気が気にならないほどに、身体が熱い。大典太ももう限界だった。片手でしっかりと腰を固定し、取り出した自身の亀頭をひくつく入り口へと充てがうと、きゅうと物欲しげに吸い付かれ、神経が焦げ付きそうになる。
「ぁ、……兄弟、」
「入るぞ」
 ぐ、と力を入れれば、緩んだ入り口は容易く大典太を迎え入れた。ぐぷぐぷと溶けた軟膏を潤滑油に、ゆっくりと隘路を拓いていく。
「ぐっ………ひぁっ、ああっ……!」
 噛み殺しそこねたソハヤの声が洞窟内に反響する。その声が気になったのか僅かばかり中が締まった。そこへ自身を強く押し込めば、また声が漏れる。

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